Reigakusha Gagaku Ensemble .
Review

CD『秋庭歌一具』芸術祭優秀賞受賞

株式会社ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル  武満徹: 秋庭歌一具/伶楽舎
 日本の伝統楽器を現代的脈絡の中で展開した作品として傑出したこの楽曲の完成から四半世紀近く経て、このCDの演奏は、演奏者と楽曲とが深く馴染み、より豊潤に熟した質の高いものとなっている。このような演奏を楽家出身でない若手を中心とする伶楽舎が実現している点も評価される。録音技術的にも、ステージ上の演奏者の配置がわかる奥行きのある音響採録に成功している。

平成14年度(第57回)芸術祭贈賞理由(レコード)

毎日新聞“今月私の3枚”

武田明倫
『秋庭歌一具』は武満の雅楽(1979)。6曲からなる一具(一揃い)で東京楽所(中心 メンバーは宮内庁楽部)初演。当時の伶人たちの多くが「これは雅楽ではない」と決 め付けた中で作品にほれ込んだのが芝 祐靖。宮内庁を退職しこの作品の演奏のために 同志と「伶楽舎」を結成。生前の武満からは常に「全体に速いのね」と注文をつけられたというが、練りに練っての「けじめ」の演奏。昨年4月サントリーホールでのコンサートの機会にわざわざホールを借りての録音。秋の庭。ししおどしの音とともに 「音楽」が舞い降り、夢のときを過ごして去ってい行く。

礒山雅
『秋庭歌一具』は現代作曲家と雅楽の出会いの結実だが、昔と今の完璧な融合に驚か される。雅にして玄妙な時間が流れ、まさに天上の奏楽を覗き見る思いだ。作品といい演奏といい、現代日本の最高の成果に数えられよう。

梅津時比古
『秋庭歌一具』によって武満徹の方法が極めて雅楽に親近性を持っていたことがわかる。

( 上記三名中二名より第一位の評価をいただきました。)
毎日新聞2002年9月17日掲載

中島健蔵音楽賞 特別賞 

音楽監督の芝 祐靖氏は基本となる古典雅楽の端正な演奏を目指しつつ、一方で伶楽舎 の独自路線として、彼自身が長く手がける廃絶曲の復元演奏や正倉院復元古代楽器に よる演奏、そして現代作曲家による新作雅楽の演奏を積極的に展開してきた。しかも、雅楽不休のために従来の雅楽演奏の場だけではなく、むしろなk外のコンサートホールや音楽祭などに演奏活動を展開してきた。
 とくに、昨年5月8日に芝 祐靖作曲の古典雅楽様式による『呼韓邪単干』と武満徹『秋庭歌一具』を演目にサントリーホールで開かれた伶楽舎の自主公演は、このような見事な理念に立つ芝 祐靖と伶楽舎の16年の歩みとその成果を見事に披露したものだった。
 今回の中島健蔵音楽賞特別賞は、芝 祐靖と伶楽舎のこれまでの豊かな実績とこの演奏会の優れた内容に対して贈られるものである。

(選考委員 石田一志)

物語性豊かな芝の「呼韓邪單于

 意欲的な活動を続けている雅楽の演奏グループ伶楽舎の委嘱新作を集めた公演「伶倫楽遊」を聴いた。芝 祐靖作曲の雅楽組曲『呼韓邪單于〜王昭君悲話〜』(初演)、芝は「漢書」など漢籍によりながら、全体を王昭君と呼韓邪の純愛の物語としてまとめ、7曲約五十分の組曲とした。伝統的な響きが続く作品だが、山田流箏曲の下野戸亜弓が王昭君役で歌を担当し、古典雅楽にはない味わいを聞かせた。彼女が場面に会わせて華麗な衣装から北方民族をイメージさせる簡素な装束へと装いをあらためた演出も効果的。
 (中略)繰り返し演奏される新作の少ない雅楽のレパートリーに物語性豊かな芝の『呼韓邪單于』が加わったことを歓迎したい。

東京・津田ホール
週間オンステージ 2000

東京オペラシティで聴いた雅楽

  きらめく音が天上から降り注いだ。十月二十五日夜、東京・オペラシティコンサートホール・タケミツメモリアルで聴いた雅楽は、従来の雅楽のイメージを塗り替えた。(中略)「ホール全体が『良く響る楽器』を目指し」設計されているというが、雅楽には、このホールはまさしく「よく響く楽器」。キラキラとした音に包まれる、演奏を聴きながらまず、そんな言葉が浮かんだ。管弦がこれほど興趣に富む音楽とは、不覚にもこの夜まで気がつかなかったのだ。
 武満徹『秋庭歌一具』もまた、美しい響きで魅了した。木しょうの鳴り交わす音がこだまのように空間を浮遊する。殿上人の娯楽として奏でられていた時代から現代まで、脈々と続く音楽の命が、この一曲に込められているような奥行きのある音を聴いた。当夜の演奏がいたく心に響いたのは、芝 祐靖と伶楽舎という現代的完成を兼ね備えた新しい世代の楽人の演奏だった点にあったことはいうまでもない。

東京・オペラシティーコンサートホール
邦楽ジャーナル 1997.12月号

「日本の響き〜雅楽彩々」雅楽観変える革新性

 かつては、きびしくも保守的な姿勢に終始していた雅楽が、いま自由に新しい境地をひらきはじめた。それを強く印象づけたのが、「日本の響き〜雅楽彩々」(二十二日いずみホール)である。(中略)
 武満徹『秋庭歌』は、曲の西欧的な構成と伝統の尊重を巧みに両立させた。この種の新作で一時代を画した名曲の名演である。今回の公演は私の雅楽観を一変させたが、おそらくすべての聴衆がそう感じたに違いない。

大阪・いずみホール
日本経済新聞 1997.8.28

よみがえる雅な平安絵巻

「白薄様、濃染紙の紙・・・」と歌いながら、狩衣や衣冠をつけた楽人たちがしずしずと入場し、床におかれた楽器を手に取る。やがて、笙や龍笛、鉦鼓、琵琶が次々と奏でられ、響きが層を成すように重なって、雅な雰囲気に満たされて行く。(中略)再現されたのは「露台乱舞」平安ー室町時代に宮中で神事の後に催された娯楽的な雅楽の儀式。
 <和(やわらぎ)の響き>の公演は、西洋音楽の殿堂で、わが国最古の音楽が一時よみがえった夕べでもあった。

東京・サントリーホール
読売新聞 1996.2.10